5月8日(金)から6月7日(日)まで、VIVI2FアートスペースにてEDO AND YUMEKA × MASAHITO HIRANUMAによる個展【MUSE “L’amant de Chopin”】が開催中です。
今回はEDO氏ご本人にインタビューを実施し、個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。

――今回の個展のコンセプトについて教えてください
普段僕たちが展示会を開催するとき、いつも作品のなかで一枚だけMUSE的な存在の絵を描いています。今回一緒に展示をしたMASAHITO HIRANUMAさんもMUSEシリーズの作品を作っているので、お互いの共通テーマであるMUSEをタイトルにしようという話になりました。
ただ「MUSE」という括りでは広すぎるのでもう少し絞ろうとなったときに、ショパンとショパンの恋人であるジョルジュ・サンドのストーリーを作品に落とし込むことにしました。
――今回見られる作品について教えてください
僕たちは展示全体の世界観を大切にしているので、新しい展示のときはすべて新作を揃えています。
今回は250曲以上あるショパンの曲のなかからピックアップした曲を、4ヵ月ほど毎日ずっとアトリエで流していました。作品は、まずは僕が音楽を具象化し、YUMEKAは目からの情報を消した状態で音をビジュアル化するというやり方で作っています。
普段はふたりでひとつのキャンパスに描くこともあるのですが、今回はそれぞれのキャンパスで描きました。

――ショパンとジョルジュ・サンドに注目したきっかけは
僕たちのアトリエでは朝からずっと、ジャズやクラシック、ロックなど、色々な音楽がランダムに流れているんです。今回の企画を考えているときにふとノクターンの9-2が耳に入ってきたので、これを絵にしてみようと思いつき……。それからノクターンとワルツとバラードを選んで、それぞれの曲を表現した作品を3枚ずつ描きました。

――普段から形がないものをモチーフに描かれることも多いのでしょうか
僕は元々デザイナーをやっていたので、若い頃はありとあらゆるジャンルのものを勉強して、吸収してきました。そうした経験が、かたちを持たないものを具象化するという今の描き方にいい影響を与えているのかもしれません。
この世には、ものやことから生まれるストーリーがたくさん溢れてるので、僕はそれを調べて得た知識を再構築して、新しいストーリーを作るような気持ちで描いています。
そうすると、自分が描くテーマに関係している人たちとコラボしているというか、背中を押されているような感覚を覚えることがあって。そこに意識が近づけば近づくほど、その人たちが協力してくれたのかなと思えるようなことが起こったり……。
こうした出来事は、やはり偶然ではなく必然だと考えています。だから僕は普段から目に映ったものや耳に入ってきたものを描いて、偶然から必然に変えることを重ねていきたいと考えています。
――2人でひとつのキャンバスに向かって作品を仕上げるスタイルならではの面白さ、または難しさは
人間に「体」があって「魂」があるように、作品にもそれらがあると僕は考えます。
だから僕が具象として体を作り、そこに彼女が抽象として命を注ぐような感覚で制作しています。
最初は、それぞれに得意なことをひとつのキャンバスで描いてみようと、実験的にやってみたのがきっかけでした。そのときに、まるでジャズセッションのような感覚で表現力が増幅したように感じたんです。それぞれの表現がうまく噛み合うと、ひとりでは成し得ないエネルギー量を持った作品が生まれることを知りました。
一方で、やはり最初の10年くらいはお互いがやりたいことを主張して描いていたので、それがキャンバスのなかでぶつかるとうまく形にならないこともありました。
でも、徐々に相手の感じていることをお互いにうまく共有できるようになって、2人で作品を作り始めて約18年を迎えた現在、無理や違和感を感じさせない作品が完成させられるようになったと感じています。
多分ほとんどの作家さんは、自分の作品に手を加えられるのってものすごくストレスだと思うんですが、僕たちはなぜかすんなりとお互いに受け入れることができて。その理由は今は分からないけれど、いずれはなぜふたりで描いていたのかが分かるときが来るのかもしれないですね。

――VIVIの印象と、今回の個展の注目すべき点を教えてください
今まで色々な場所で展示をしてきましたが、VIVIはレストランとギャラリーがしっかり分かれているので、ホワイトキューブと同じような感覚で展示をすることができました。
普段絵を描くときの自分のなかの大きなテーマはなんとなくぼんやりとしていて、それは時間の経過で変化していくものなのですが、今回は自分が絵を描き始めた当時のことを思い出しながら描いた作品があります。
僕が16歳の頃、先輩に頼まれてライブハウスやクラブのイベントのフライヤーに載せる絵を描いたのですが、それが絵でギャラを貰うという初めての経験でした。
その当時、僕は西海岸のハードコアやパンクなど、色んなジャンルの音楽から影響を受けていて、あの頃は音楽とファッション、アートがすべてうまくミックスされていた時代だったなと思うんです。
今回の展示にある小さな白黒の3枚の絵は、あの90年代当時に受けた影響を再構築したものなので、そういった背景も注目してもらえたらと思います。

――最後に、お客さんにメッセージをお願いします
「知らないこと」って興味の対象から外れがちだと思うのですが、僕はその知らないものを楽しめる時間を一瞬でも作ることは大切だと考えています。
だから、見に来てくれたお客さんにそういう一瞬を作ることができたら、自分たちがやっている価値があるなといつも思いながら作品を作っています。
世の中の評価を気にせずに、自分達が感じた心で世界を見てください!きっとその先に芸術があります。
――EDOさん、ありがとうございました
取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美