6月7日(金)から6月30日(日)まで、VIVI2Fアートスペースにて横山玄太郎氏個展【うさぎのきもち】が開催中です。
今回は横山玄太郎氏ご本人にインタビューを実施し、今回の個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。
profile
横山 玄太郎 @gentceramics
陶芸家
15歳で単身渡米。 留学先の高校で陶芸と出会い、ハートフォード美術大学に進学。
卒業後、現地の陶器製作所に勤務ののち、2002年に帰国。
以降、門前仲町にアトリエを構え、銀座三越をはじめ国内外のギャラリーで作品を発表。
森英恵や漫画“へうげもの”の企画展などに参加する。 作品は森ミュージアムショップにて取り扱い中。
――今回の展示でみることができる作品について教えてください
過去作も焼き直しなどを加えて展示する予定ですが、展示の半分以上が新作になります。
今年横浜駅のNEWoManのショーウィンドウで展示した作品から派生した新作を現在制作中です。
横浜で展示したものより1.5倍くらい大きい作品をゴールドで仕上げるつもりでいるので、金にゆかりのある名古屋にもマッチするかな……と期待しています。
あとはバッジやコップ、植木鉢など、手に取ってもらいやすい作品も用意している最中です。
――今回の個展のコンセプトについてお聞かせください
メインビジュアルとなっているのは、人間とうさぎと鳥が一体化した存在が謎の物体に覆いつくされているオブジェです。
ウサギは寂しがりやというイメージがあると思うのですが、それは自分含め人間も同じだなと思っていて。なので、これは自画像的なものでもあるんです。
身体全体を表した作品が良い体格をしているのは、例え一見強そうな外見だったとしても優しくしてもらえないと寂しくて弱くなってしまうんだよというメッセージ。そこに元々好きなモチーフである鳥が加わって、このようなかたちになりました。
――ビビットなブルーも印象的です
今回はブルーがメインで、あとは白とゴールドという3色でまとめて作品を作る予定です。
というのも、長い間陶芸をやってきて、最近ようやく自分にとって一番フィットするなと感じられたのが青なんです。これは自分の意見だけではなくて、周囲の反応を見ていると割と明確になるものがありました。
今までは本当に自由に作ってきたので、個展ごとに作品のスタイルや色を変えていたんです。しかし四十半ばも過ぎましたし、そろそろ自分のなかでも「定番」を作っても良い時期なのかなと思って。
例えばマティスは色々な過去作がありつつも、あの青い切り絵を見れば彼の作品だなって一目で分かりますよね。僕の作品も「あ、これは玄さんの作品だな」って一目で気付いてもらえるように、色や形を徐々に絞ってフォーカスしていきたいと考えています。
――つぶつぶのようなフォルムも横山さんの作品の持ち味ですが、この形に至った経緯を教えてください
大学に入って初めて取り組んだ課題が「何かひとつ形を選んで同じものを複数個作り、それを組み合わせて作品を作る」という内容でした。僕はそのときにどんぐりの殻斗(ぼうしの部分)を粘土でたくさん作って、それをくっつけてひとつの作品を作ったんです。それが結構楽しかったという記憶もありますし、評価も良かったんですよね。
それから20年以上経ちますが、今でも細かくて同じ形のものを貼り付けるような作品を時々作りたくなるんです。あんなに面倒くさいのに(笑)。
多分似たようなものをくっつける作業自体が好きというのもありますし、視覚的にも好きなんだと思います。
あとは、例えば小魚のように小さなものでも複数集まることによって大きく見える効果があるじゃないですか。そうした、小さな集合体が持つ迫力みたいなところにも惹かれているんだと思います。
――横山さんが陶芸に出合ったきっかけは?
中学を卒業するときに、僕の両親は日本の高校進学に限らず色々な選択肢を与えてくれました。中学校2年生の夏休みのとき、ワシントン州にあるネイティブアメリカンのお宅にホームステイを体験したことがとても刺激的な経験だったので、もっと新しい世界を見てみたいと思い、アメリカの高校に進学しました。
そして、その学校の課外授業のひとつとしてたまたま出合ったのが陶芸なんです。
そこで初めて作った作品がまあまあ上手にできて、友達や先生が褒めてくれたというのが始まりでしたね。
――陶芸の道に進もうと思った理由を教えてください
僕は元々貧乏性というか、今までやってきた経験だったり好きだと思ったことを途中でやめてゼロにしてしまうのがもったいないと感じる性格なんですよね。
例えばスケボーやサーフィンなんかもそうなんですけど、一度生活の中心になるほど好きになったことを途中でやめてしまうのが嫌で、身体が動く限り一生続けたいんです。
そういう性格もあって、陶芸をずっと続けていきたいという気持ちから美術大学に進学しました。
卒業後現地で10年ほど勤務したのち、そろそろ新しいことを経験したいなという気持ちで日本に帰国しました。自分の想定では、数年色んな新しいものを見てまた違う国に行こうかなと思っていたんです。でも、アトリエをかまえたら日本から離れられなくなっちゃって(笑)。
そして去年、自宅にアトリエを備えつけられるような物件を見つけて千葉に引っ越しました。都内のときと比べてアトリエが広いから作品制作の同時進行もできるし、作りたい放題の環境ですね。
――最後に、作品の楽しみ方を教えてください
食事をするときに「これはどうやって作られているんだろうな」「素材は何だろうな」と考えるのと同じように、作品を見るときもそんな疑問を持ってもらうと面白いかなと思います。その瞬間に起こることを楽しんでもらいたいですね。
あと、僕は「この作品を作った人はきっとこういう人なんだろうな」ってお客さんが想像できるようなものが作れたら最高だなと思っていて。僕が持っている遊び心だったり、優しさだったりが伝わったら嬉しいですね。
――横山さん、ありがとうございました。
取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美