INTERVIEWインタビュー
INTERVIEW

4

ITOKiN氏インタビュー

インタビュー

4月3日(金)から5月3日(日)まで、VIVI2FアートスペースにてITOKiN氏個展【それぞれの道に、太陽はある】が開催中です。
今回はITOKiN氏ご本人にインタビューを実施し、個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。

profile

ITOKiN @itokin1221

1982年愛知県生まれ。

2012年より「MAKE smile project」を始動。世界47 カ国を旅し各地で表現活動を続ける。赤・青・黄の3色のみを使い、左手で 描く独自のスタイルは「ゼロからの挑戦」であり「これから始める誰かへの エール」。旅先での出会いや感情を普遍的な「太陽」に重ねる作品は、誰もが自分の見方を肯定し、一歩踏み出す勇気を得られることを願っている。

――今回の個展のコンセプトについて教えてください

「都会の森」をコンセプトとするVIVIでの開催にあたり、今回は都会の森に差し込む太陽の光をイメージして作品を作りました。
太陽の光というのは太陽へと続く道のようなもので、どんな道でも自分が見つけた道を歩いていけばいずれ自分なりの正解やゴールが存在するはず。だから、今歩いている道を堂々と歩いて行きましょうというメッセージが伝わったらいいなと思っています。

そして今、静岡の松坂屋でも個展を開催しているのですが、そちらではまた違った太陽を展示しています。
そちらでは歪んだりギザギザのかたちをしていても太陽は太陽であり、全部丸なんだということを掲げることで、みんなの生き方は肯定されるものという意味を込めています。

同じ太陽をモチーフにした作品ですがそれぞれに異なるコンセプトがあるので、もし機会があればその違いも楽しんでいただきたいですね。


――太陽を描くようになったきっかけは

僕は世界中を旅をして絵を描いているんですが、ある暑い国に行ったときに色んな顔をした太陽がたくさん出てくる絵を描いていたんです。
そのときに自分が描いた絵を見た人は、誰しもが口を揃えて「太陽を描いたんだね」って言うんです。当たり前のことなんだけれど、僕はそのときに不思議な感覚を覚えていました。

日本に帰国してから、ひとつのキャンバスに太陽を3つ描いた絵を展示していたときに、お客さんから「あなたは世界中を旅した結果、こういうことを感じたんだね」と言われて。そのときに、あのとき感じていた不思議な感覚をようやく理解することができたんです。

太陽は世界中すべての人が知っているけれど、概念は国や環境によって本当にそれぞれで、ちょっと厄介者扱いされることもあれば、本当にありがたい存在として言われることもあります。それは太陽だけでなく人も同じで、今は不遇だとしても、活躍できる場所がきっとあるはずだなって。

だから僕は、自分という存在を太陽に投影することで「ここなら輝ける」という場所を皆さんに見つけてもらうことができるんじゃないかという想いを込めて、太陽をたくさん描くようになりました。


――2012年から始めた「MAKEsmileプロジェクト」について教えてください

僕は元々会社勤めをしていたのですが、2011年に起こった東日本大震災をきっかけに30歳で会社を辞めて、MAKEsmileプロジェクトを始めました。

僕は奇抜な服を着ていたりもするのですが、中身は至って普通なんです。
だから、中学生くらいまでは美術系の学校に進みたいと思っていましたが、先生から「その道は難関だよ」と現実を聞いて諦めたり。就職してからも、当時流行っていたスティーブ・ジョブスの成功哲学の本にあった“今日の自分の仕事に満足できたかを自問自答する”みたいな一節を読んでも、これは一部の天才の話だから自分には当てはまらないと思っていました。

でも、東日本大震災を機に、明日どうなるか分からない人生だから1日1日を大切にしなければいけないと思ったし、“天才じゃないから挑戦できない”と自分が感じていた諦めを克服して、誰かの目に止まれば何かを変えることができるかもしれない、と思ったんです。

それで、最初は自分の目の前の人を笑顔にしたいという想いから、出会った人の似顔絵を描いてFacebookのアイコンにしてもらう「MAKEsmile」の活動を始めました。そうやって続けていくうちに、自分の周りの人が楽しんでくれると僕も笑顔になっているから、どんどん連鎖して輪が広がっていくことに気付いたんです。

その結果、はじまりはただただ似顔絵を描くだけだった活動が、世界の人々、さらには物や自然も対象にして笑顔を作っていくプロジェクトへと成長することができました。

――3色のマジックを使って左手で描くというご自身のスタイルについて

左手で描くことを決めたのは、将来自分がおじいちゃんになったときに、遊びに来てくれた若い人たちへ言葉が届いたらいいなと思ったことがきっかけでした。

やっぱり昔自分が偉い人の話を聞いたときに「それは偉い人の話でしょ」って自分と結び付けて考えられなかったように、きっと才能や環境に恵まれていたんだろうって捉えてしまう人は少なくないと思うんです。
それをクリアするには、なにかしら目に見えるかたちでコツコツ積み上げた成果を残すしかないと思い、線すらまっすぐに引けない左手で絵を描き始めました。
あとは単純に長く続けたいから外的ストレスを減らしたかったという側面もあります。
利き手で描いた絵は評価の対象になってしまうけれど、左手でちょっとでも上手く描けたらすごいじゃんって言われるので(笑)。

3色の色に関しても、コンビニでも手に入るのが青ペンと赤ペンだったっていう理由から始まり、喫茶店でジャンプの背表紙をぼーっと眺めているときに「赤と青と黄色が多いな。そっか、ヒーローの色だからか」なんて気付きもあって。
最初から練って練って固めたわけではなく、自然と今のスタイルになっていって長く続けてくることができている、という感じです。


――47カ国を巡るなかで、ご自身の作風にも変化はありましたか?

元々はアーティストがたくさんいるであろうNYに行ってみようみたいな感じで、ほぼ無計画で出国しました。
渡米した時期がたまたまNYのファッションショーと被っていたのですが、着物に笠を被った僕のファッションが目立っていたようで、NYタイムズ紙とか色んなメディアに取材されたんです。
でもそんなチャンスに恵まれたのに、結局絵の話が一切できなかったんですよね。そのときに、このままでは何者にもなれないぞっていう危機感と、自分を取材してくれた人たちの国々に行けば興味を持ってくれるかもしれないという希望を感じたことをきっかけに、旅をすることを決めました。

旅をする前は、絵は自分の発想から生み出すことができると思っていたんです。
でも、色んな国を訪れて目で見たものをスケッチするうちに、現地で出会った景色によって自分の想像を超えるような絵が描けるんだということに気付きました。
実際に足を運んでみないと真実は分からないし、どう感じるかも分からないものなのだなということを痛感しましたね。


――旅を終えて、日本でアーティスト活動をするようになった理由とは

3年くらい旅を続けているうちに、今の自分は「絵描き」ではなく「絵がちょっと上手な旅人」になってしまっているなと思い、そろそろ帰国をしようと決心しました。でも日本を目的地としてアジアに入った矢先、ネパールで地震があったんです。
僕が絵を描く生活を始めたきっかけが震災だったこともあり、何か自分にできることがあればと思い現地のボランティアに参加しました。

ところが現地での環境は想像以上に過酷で、自分が体調を崩して入院することになってしまい……。体調はすぐに回復したのでそのまま続けたい気持ちがあったのですが、自分の状況を知ったたくさんの人に心配をかけているなかで強行するのも心が痛く、その結果急遽帰国することになったんです。


なんのプランもないまま帰国してしまったので、このままでは「自称絵描き」になってしまう…という焦りから、美術館に絵が飾ってあれば絵描きと言えるだろうという安易な発想で近くの美術館に作品集を持ち込みました。今思えば無謀なのですが、とにかく知識がなかったので(笑)。

最初は美術館の方も戸惑っていらっしゃる様子でしたが、2日後くらいに「展示をしてみませんか」とご連絡をいただき、展示が実現できたんです。
それからはありがたいことに展示を見てくださった方からご依頼をいただいて、今につながっています。


――VIVIで個展を開催した印象は

僕にとって芸術とは、人生を豊かにしてくれる要素だと思っています。だから、アートに興味があって訪れたお客さんだけでなく、お食事に来たお客さんにもアートの価値を伝えられたらいいなと思って今回の展示に臨みました。

今までに錚々たるアーティストの方々が、それぞれ工夫を凝らして素晴らしい展示をしていらっしゃったので、自分もしっかりやらないとというプレッシャーはありましたね。
お客さんとの距離感が近い展示だと思うので、僕が在廊している間はできるだけお客さんとコミュニケーションをとりたいと思っています。そういう会話を通して、自分の絵だけではなく、アートの楽しみ方みたいなものを見出してもらえたら嬉しいです。


――ITOKiNさんの作品の楽しみ方のヒントを教えてください

作品に解説を付けることには賛否両論ありますが、僕はそれぞれの作品にタイトルと一文を付けています。

絵を見て何かをパッと感じ取ることができて、自分の解釈で楽しめたら素晴らしいのですが、それができるのは芸術に精通した方や感受性が豊かな一部の方だと思うんです。
先ほども言ったように僕は至って普通の人間なので、なにかしら差し伸べてくれる手がないと心から芸術を楽しむのは難しいなと感じていて。

なので、僕はできるだけお客さんに絵の背景が伝わるようにと考えて考えてタイトルと一文を書いているので、そちらも注目していただけたら嬉しいです。


――最後に、お客さんへのメッセージをお願いします

今回の展示は、自分の道を信じて進んでほしいというメッセージを込めました。

VIVIのお客さんたちはすでにそうされている方が多いかもしれませんが、自分のそういう気持ちを再確認して突き進んでいただく活力になればいいなと思っています。

――ITOKiNさん、ありがとうございました

取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美

RELATED

関連記事

PAGE TOP