6月12日(金)から7月20日(日)まで、VIVI2Fアートスペースにて神田真由氏個展【潜律】が開催中です。
今回は神田氏ご本人にインタビューを実施し、個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。
神田真由
1997年愛知県生まれ。名古屋芸術大学デザイン学部卒業。
紙の張りと立体額を組み合わせ、影や奥行きを生み出す独自技法「浮かし張り切り絵」を用い、“感情の昇華”をテーマに制作を行う。
繊細な切り絵表現とインスタレーションを通して、人の内面にある“欠点=影”を魅力へと昇華させる世界観を追求している。
愛知・東京・京都・兵庫など全国各地で個展・グループ展を開催。
2023年「G.A.M公募展」大賞・外務大臣賞を受賞。
そのほか、「スペイン美術賞展2021」テクニック部門優秀賞、「名古屋芸術大学卒業・修了制作展」優秀賞、「全日本芸術公募展」入選など、多数の受賞歴を持つ。

――今回の個展のコンセプトについて
今回の個展のタイトルは、潜るに律すると書いて「潜律(せんりつ)」です。
水の中に潜ると周囲の音が消えて、自分の呼吸音や鼓動など、内面の音がよく聞こえるように思います。今回は自分と対峙する時間を表現したかったので、このようなタイトルを名付けました。
そのテーマを一番象徴している作品が、フライヤーにもなっている「真眼(しんがん)」です。こちらは虎をモチーフにして、周囲の声に沈んで流されてしまっている自分の本心と向き合い、誠の目で物事を見つめ直す時間の大切さを表現しました。

――今回VIVIで見られる作品について
今回の展示では、これまで数年にわたって制作してきた作品と、新作をあわせて34点展示しています。
完全な新作はインスタレーション作品を含めて5点ですが、名古屋初展示の作品も含めると6、7点ほど新しい作品をご覧いただけます。

そして、せっかくならVIVIさんでしかできない作品も作りたいと思い、今回初めて本格的なインスタレーション作品にも挑戦しました。搬入当日に会場で組み上げるという、これまでにない感覚的な方法で制作した作品になります。
VIVIさんの空間だからこそ生まれた作品だと思っていますし、この経験を通してもっと大きな規模の作品にも挑戦してみたいという気持ちが強くなりましたね。

――ご自身の作風やモチーフについて
私の作品のメインモチーフは金魚ですが、ほかにも虎や花など、さまざまなモチーフが登場します。
モチーフを選ぶ際に必ず意識しているのは、良い象徴であるものということ。
わたしは日頃から、アートは衣食住のように生きるために必要不可欠なものでないからこそ、日々に彩りを与えたり、負の感情を昇華させるような存在であってほしいと願っています。
そんな思いから、わたしの作品はすべて前向きな意味や物語のもとで作っているので、縁起が良かったり、プラスの意味を持つものを選ぶようにしています。
虎には強さや勇気、魔除けといった象徴とされているのですが、金魚は少し特別な存在です。金魚がひれを揺らしながら泳ぐ姿は、まるでドレスをまとって舞う女性のようにも見えますし、その繊細な動きは人の感情とつながる部分を感じるので、自分の感情の代弁者としてメインモチーフにしています。

――浮かし張り切り絵をはじめたきっかけとは
小学6年生の頃に訪れたギャラリーにたまたま切り絵作家の先生が在廊されていて、お話をさせていただいたのが切り絵と出会ったきっかけでした。
先生がご自宅で切り絵と絵画教室をされていたのでその教室に1年間通い、その後は独学で制作をしていました。
絵を描くことも好きだったのですが、美大受験をするにあたって画塾に通わせてもらったとき、受験用に絵画の基礎などを突き詰めていくうちに、やはり自分は手を動かして物を作る方が好きなことを再認識したんです。
そして美大ではデザイン科を専攻し、自分が扱う紙と真逆の素材を扱えるようになりたくてメタル&ジュエリーのコースを選びました。

そして大学2年生の頃に初めて個展を開催したのですが、そのときのギャラリーカフェのオーナーさんから自分ならではの強みを持った方が良いというアドバイスをいただいたんです。
そこで、わたしはなぜ切り絵に惹かれるのだろうと改めて考えてみたときに、切り抜いたところにできた空間から生まれる影を魅力に感じていることに気付きました。
それからは切り絵そのものだけでなく、影も作品の一部として見せるために、立体額装による浮かし張りの表現を取り入れるようになりました。

――VIVIの印象について
VIVIさんはホワイトキューブのギャラリーとはまた違った雰囲気が出せますし、自由度も高く、好きなようにやらせていただけたことが本当に嬉しかったです。
私の作品の性質上、薄暗い空間でスポットライトを当てて作品に影を出すというのが一番理想の展示なので、VIVIさんのギャラリースペースに飾らせていただけてとても光栄でした。

――ご自身の作品の楽しみ方について教えてください
私の作品は「写真で見るのと実物で見るのとでは印象が違いますね」というお声をいただくことが多いです。立体構造によって生まれる影や奥行き、光の変化は実際に見ていただいてこそ感じられる部分だと思うので、ぜひ色んな角度からご覧いただきたいです。
また、作品の中には文字を模様の一部として取り入れているものもあります。
オープニングパーティのパフォーマンスで作った作品と、メインモチーフの作品には「VIVI」の文字をデザインに取り入れてみたので、ぜひ探してみてください。そうした遊び心も含めて楽しんでいただけたら嬉しいです。

――VIVIのお客さまへメッセージをお願いします
人は誰もが不安や悩み、弱さを抱えながら生きていると思いますし、私はそういう影の部分も大切だと考えています。
だからこそ、その影を見ないふりをするのではなく、向き合って受け止めた上で次へ進む力に変えてほしいという思いを作品に込めています。
今回の個展では、足を運んでくださった皆さまに一瞬でも日常を忘れ、心が少し軽くなるような時間をお届けできたらと思い、作品を制作しました。
ぜひ会場で作品の世界に没入しながら、ご自身の心と向き合う時間をお過ごしいただけたら幸いです。

また、今回は在廊日限定でステンシルを施したハンカチを販売したり、メインモチーフのインスタレーションを一番素敵に撮影してInstagramに投稿していただいた方へオリジナルステンシル入りのTシャツと2000円分のVIVIお食事券をプレゼントしています。
色々な企画をさせていただいているので、皆さまぜひ奮ってご参加ください!

――神田さんありがとうございました
取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美