INTERVIEWインタビュー

INTERVIEW

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アーティスト 石田真也氏 インタビュー

インタビュー

2月28日(金)から3月23日(日)まで、VIVI2Fアートスペースにて石田真也氏個展【A LITTLE PRAYER】が開催中です。
今回は石田真也氏ご本人にインタビューを実施し、個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。

profile

石田延命所 石田真也(造形作家) @shinya.ishida

1984年和歌山生まれ。

「みえない力」をテーマに作品を制作している。モノが生まれてかは無くなるまでのサイクルに介入することで、そこに小さなズレが生じる。その狂ったサイクルに何か可能性はないだろうか。国内外を問わず訪れた土地で集めた廃品や漂着物、人が不要となった物を主な素材として立体作品を制作している。

近年の個展は2023年「 Time Conversation」(東京・YUGEN Gallery) 2024年「KNEADING THE TIME」(愛知・ RIM)

2020年NHK・Eテレ『天才てれびくん』小道具担当。2021年恒久作品「虚構のアーカイブ」(和歌山・ 友ヶ島)2024年「沿線のみる夢」「廃列」(南海電鉄めでたいでんしゃ内・和歌山)など。

――今回の個展のコンセプトについて教えてください

個展のタイトル「A LITTLE PRAYER」を日本語に訳すと「小さな祈り」という意味の通り、祈りをコンセプトとした作品を展示しています。
僕は現在まで一貫して「見えない力」をテーマに、国内外を問わず訪れた土地で集めた廃品や漂着物、人が不要になった素材で作品を制作しているので、今回もその流れを汲んだ作品群になります。

――今回VIVIで見られる作品について教えてください


今回は大きいインスタレーション作品のほかに、小さな祭壇を新作で21点制作しました。

インスタレーション作品は今までに各地で作ったり収集した色々なパーツを組み合わせて作るのですが、毎回その場所の雰囲気に合うかたちにコラージュして完成させています。移動させることを目的としたりもしています。


A LITTLE PRAYERは「一家に一台祭壇を」という思いで作った小作品のシリーズです。
以前、仕事が忙しい時に海に漂着物を拾いにいったのですが、忙しいことを忘れるとは違う何か満たされた感覚になり必要な行為だなと思いました。僕は祈りとはお願い事をするのではなく、無心に何かに夢中になることだと思っていて、そんな心を飛ばす時間が日々アップデートされ忘れてしまってゆく感覚をつなぎとめてくれると思っています。
今回の小作品、A LITTLE PRAYERが誰かの生活の中のアクセントになれたらいいな。と願いを込めています。

――ご自身の作品・作風について教えてください


大学在学中インドに訪れたとき、ある子どもから「あなたの神様は何なの?」と聞かれたことが、自分が小さな頃から築き上げてきた価値観が大きく変わるきっかけでした。

僕はちょっと考え込んでしまったんですが、インドの子どもたちに同じ質問をしてみると、それぞれにちゃんと答えがあるんです。ある子はヒンドゥー教の神様の名前を挙げたり、中にはジャッキーチェンが自分の神様だという子もいたり。

向こうでは子どもたちだけでなく大人もまっすぐに自分の神様を信じていて、それが生きる力、生きる強さになっているのだと思いました。
そして忙しい朝の時間帯にめちゃくちゃ急いでいたとしても、神様の前を通るときはちゃんと一瞬お祈りするんです。そんな人々の姿がすごく綺麗に見えたし、その時間を持っていることはとても幸せなんだろうなと感じました。


その一方で祈りの対象となる仏像は、綺麗な石や立派な木彫りで造る日本の物と違って、結構雑に造られていたりして。でもだからこそ身近な存在であり、それに魅力を感じたことから「自分の神様を作ってみよう」と思い、マスクや祭壇を作り始めました。

――作品に廃材を使われている理由は


学生の頃はお金もないし、元々収集癖があったので夜な夜な廃品を回収して作品を作り始めて今に至ります。
廃材やゴミを使っていると、よくエコやリサイクルを目的としている作家だと思われがちなんですが、ただ好きなものが人がいらなくなったものだというのが本当のところです。

海がある場所には海ゴミがあるけれど、海がない場所には海ゴミがないじゃないですか。
だから、海のないところに海ゴミを使った作品を持っていくと価値が変わったり、色んな変化が起きることを目的としてゴミを素材に使っている部分もあります。


また、素材のひとつひとつにストーリーがあることも面白いところだと感じています。
例えば丸い形を10個並べたものを作りたいと思ったときに、買ってきた素材を並べればすぐに作れるんです。
でも僕がやりたいことはそうではなく、10個の丸いものを探しに行った先で人に出会って会話をしたり、大きさもバラバラなものを並べて作ってみたり、やっぱり10個もいらないんじゃないかなって全然違うものができちゃったりとか、そういう過程も楽しんで作品を制作しています。

――VIVIでの展示の感想は


やっぱり美術館やギャラリーに行くとなると人はどうしても見る姿勢に入ってしまうので、VIVIでの展示はお客さんに不意打ちで作品を見てもらえるのが楽しいですね。

僕は過去に屋台型の作品(移動祭壇)で、マスクを被ってゲリラ的に自分から作品を見せに行くこともやったりしているので元々そういう偶然の出会いみたいなものが好きなんですが、それに近い感覚があります。


これが土地によって全然リアクションが違うのも楽しいんです。東京だとみんなイベント慣れしているから「またなんかやってるな」って感じで素通りされるのがほとんどで、大阪だとおばちゃんが寄ってきて「あんたこんなんしてたらあかんで!お金稼ぎ!」って説教されることもあったり。名古屋の街も歩いてみたら面白そうですね。


また、今回シェフのゲンさんが僕をイメージしたスイーツを作ってくださったこともとても嬉しくて。ゲンさんもお若いんですが、VIVIのスタッフさんたちは20代の方が多くて、みんなすごく頑張っている空気感が好きでしたね。

――最後に、お客さんへメッセージをお願いします


僕は海外に行ったとき、当たり前だと思っていたことが覆される瞬間は心地よいものであることを知りました。
僕が作品に使っている素材は皆さんの身近にあるものなので、それが意外な形で使われている僕の作品を見たときに当たり前を疑うきっかけになれたらいいなと思います。

そして、名古屋ならではのご当地ゴミがあったらぜひ僕に教えてください!

――石田さん、ありがとうございました。

取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美

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