2024年7月から12月にかけて、松坂屋とVIVIとのタイアップ企画が実現。
松坂屋名古屋店本館6階にて<VIVI Art project>を開催しております。
9月26日から10月20日までは【 マチダタケル展 】を開催。過去に、東京と香港の個展で発表した作品【POP・ALONE】を展示しています。
今回はマチダタケル氏ご本人にインタビューを実施し、今回の展示の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。
profile
マチダタケル Takeru Machida
@takerumachida
静岡県生まれ。愛知県名古屋市在住。幼少時代をアメリカで過ごし、日本と欧米の様々なポップ・ストリート・サブカルチャーから多大な影響を受けて育つ。
特徴的な“儚く物言いたげな目”のイラストがトレードマーク。
国内外様々な媒体でアート、イラスト、デザインワークを手がけるなど多岐にわたって活動している。

――今回の展示のコンセプトについて教えてください。
今回の展示作品は、外出を控え、人と逢うことを避けるよう求められた日々ーーつまり新型コロナウイルスが流行し、街から喧噪が失われた期間に制作しました。あの頃の、人々のつながりが断絶された独特な孤独感を作品にしようと試みました。
僕の作風はポップ表現なのですが「ポップ」と「孤独」という、一見対極を想像させる言葉の組み合わせに面白味を感じて「POP・ALONE」というタイトルにしました。
孤独と聞くとネガティブなイメージがあると思うのですが、悲しさや切なさといった感情ではなく「そうした事象とどう向き合うか」という、僕なりの捉え方を作品にしたつもりです。

――本作は光と影の描写が特徴的です。どのような意図があるのでしょうか。
これは以前、夜の列車に乗って暗がりから外を眺めていたときにふと「今自分が目にしている知らない町の知らない建物、街灯の一つひとつに灯る光はそこに人の営みがあるからなんだ」と、胸が熱くなったことがありました。
互いを知っているわけでも出会うこともない他者の存在を確かに感じさせる。光によって「たとえ一人でいたとしても一人じゃない」と思わせてくれるようなそんな淡い感覚に心地よさを覚えたんです。
そんな想いがコロナ禍での日々に重なり、「光」を他者の存在を感じさせる象徴として取り入れています。
――特徴的な目やボブスタイルの女の子などが印象的ですが、ご自身の作風の背景を教えてください。
人の内面とは必ずしもバーバルコミュニケーションで伝えきれるものではないと常々感じていて、僕は絵描きなので言葉で言い表せない自分の内面性を作品に投影しています。
僕の絵に共通して描かれている特徴的な目は僕の視点を象徴しているアイコンですし、女の子のキャラクターも時には自分の内面性を表現する意図をもって描くことがあります。
詳しくはないですが、これはユング(※)が提唱する「アニマ」に近しいのではと思っています。
僕のすべてではなく、あくまでも自分の内面の一部を投影するとき、この方が定着しやすいと感じています。
※)スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングのこと

――国内外でご活躍されるマチダさん。海外で個展をする面白さはどんなところにありますか。
日本では、お客さんから「どこか懐かしさを感じる」という声もいただくのですが、それは80年代に生まれた僕自身が好きだと感じるものやカルチャーと接続しているからかなと思います。
一方、カルチャーが異なる海外では、僕のシンプルなドローイングに対して新しさを感じてもらうことも多いようで、お客さんとコミュニケーションをとるたびに楽しいサプライズがあったりしますね。
――名古屋を拠点に活動している理由について教えてください。
僕は静岡県で生まれ、幼少期はアメリカで過ごすなど何度か転居をしてきました。それぞれの場所に思い入れはもちろんあるものの、一番長い時間を過ごしている名古屋に地元に近い感覚があります。
今回の松坂屋名古屋店での展示は、VIVIのコンセプターのタカさんから声をかけていただき実現しました。
従来の個展はギャラリーの個の空間をデザインするようなイメージなのですが、今回は開かれた空間での展示なのでお買い物のついでに気軽に立ち寄っていただける展示になっていると思います。

――ご来場いただくお客様へ、作品の楽しみ方を教えてください。
代表作はどれかと聞かれることもあるのですが、自分としては毎回作品を更新し、最新作が代表作だと言えるようにしたいと考えています。
そんななかでも、皆が経験した希有な時に「POP・ALONE」という作品を残せたことはとても意義深いと感じていますし、思い入れもあります。
視覚を通したコミュニケーションならではの淡い伝わり方が理想ですし、シンプルに「色が好きだな、可愛い絵だな、なんかいいな」と楽しんでいただければ幸いです。
また、名古屋を拠点に活動している作家のひとりとして本展示を通して自分の絵を知っていただけたら嬉しいですね。
――マチダさん、ありがとうございました。
取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美