【photo by Rio Yamamoto】
9月1日(日)から9月29日(日)まで、VIVI2FアートスペースにてYohta Matsuoka氏の個展【Alter Norm】が開催中です。今回はYohta Matsuoka氏ご本人にインタビューを実施し、今回の個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。
profile
Yohta Matsuoka (JONJON GREEN)
松岡 洋太 @jonjongreen23
画家 美術家 https://www.jonjongreen.com/
群馬県高崎市出身 多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒業
2004年よりライブペイントを通して、日本のストリートカルチャーシーンに触れながら、様々な形態での作品制作を開始。
ペインティングパターンで構成する抽象表現を壁画に応用し、ダイナミックかつ自由度の高いペインティングで国内外様々な場所に大型な壁画作品を残す。
COVID-19によるロックダウンをきっかけに、2021年から、モノクロームの画面に根源的な感覚で、オブジェクトを配置する静物画でありながらポートレイトとも言える作品制作を開始。
モチーフを巧妙に配置する事によって物体が持つ本来の姿とは違う物になりうるのかを考察しながらその世界観を拡張し続けている。
Exhibition
2024
個展 「 Sincerity」 StolenSpace gallery / London / UK
個展 「It could be That 」could be That」 FFF contemporaly Seoul / Korea
個展 「Still painter Life 」 OIL by 美術手帖 Tokyo
2023
個展 「Before Dawn」 Ztory Teller Gallery HongKong
個展 「Before Dawn」 Moosey Norwich / UK
2022
個展 「 Before Dawn」 sort-one Tokyo
個展 「 Yohta Matsuoka “JONJON GREEN” ART EXHIBITION」 Dr.Martens Showroom TYO / Tokyo
――今回の個展「alter norm(オルターノーム)」のコンセプトを教えてください
alter normとは、直訳すると「標準を変える」という意味。僕の作品は認識や洞察することへの危うさや疑問を投げかけることをテーマにしているので「当たり前だと思っていたことを疑え」というようなメッセージが込められています。
例えば、人間の脳には3つの点が集まると人の顔に見える「シミュラクラ現象」というプログラムが備わっていて、僕はこの現象を利用して静物画を描いています。すると、りんごが鼻に見えたりバナナが口に見えたりと、ただ配置を変えただけで本来の性質とは異なるものに見えてくるんです。
「視点を変えることの面白さ」を表現した作品を楽しんでもらうことで、物事に対する理解を深めることができたり、新しい世界を広げられたらいいなと思っています。
――今回の個展で展示される作品について教えてください
新作と過去作を織り交ぜて、計24点の作品を展示しています。全体の7割程度が新作なのですが、今回は新しいシリーズの作品を描きました。
「見る人に“認識”を疑わせる」というテーマは今までの作品と共通しているのですが、新作はそれを綿密と素描を同じ画面に描いて表現しています。例えばリアルに描かれたりんごとデフォルメされて描かれたりんご、見た目が全く違うものなのに「りんご」と認識できることに疑問を持ってもらえるような仕掛けになっています。
――現在の作風に至った経緯を教えてください
僕は元々ビルの外壁だったりオフィスのミーティングルームだったりと、人が集まる場所の大きな壁画を描くことが多かったんです。
ところが世界でコロナウイルスが蔓延してからは世の中の活動が止まってしまい、僕の仕事も一旦ストップになった時期がありました。
外出もできず家に留まることを余儀なくされていましたが、それでも何か新しいことをはじめるきっかけにならないかとずっと考えていて。そのときまで僕はカラフルな絵を描いていたのですが、色を失ってしまった今の世相を何か新しいかたちで表現してみようと思い、またイチからモノクロで絵を描くことにしました。
まずは、画面に本当にシンプルな球体をひとつ描いてみた。そして、もうひとつ描いてみた。そんなふうに物体を配置する遊びみたいなことをしているうちに、だんだん顔に見えてきたりして、それを面白く感じるようになったことが今のシリーズを描くようになったきっかけです。
――コロナ以前の作品とのギャップが印象的です
そうですね。コロナ以前はカラフルで抽象的な絵を描くことが多かったのに、突然具象的でモノクロという真逆の作風に変わったので周りも結構驚いたようです。
ビルの壁に描くのと、アトリエでキャンバスに描くのでは、頭と身体の使い方から使っている道具まですべてが違いますし。
現在はコロナも落ち着いたので、また壁画を描く機会もあると思います。そのときは、今の作風の壁画を描いてみるのも面白そうだな、という構想も練っています。
――VIVIの印象を教えてください
以前から仲良くさせていただいているタカ・プリンシパルさんからの紹介で、VIVIでの展示が実現しました。
しっかりとしたギャラリーを併設したレストランって、意外にありそうでなかったりするのでとても興味を持ちましたし、可能性を感じる場所という印象を受けました。
お食事のために来店されたお客さんにふらっと立ち寄っていただける環境なので、普段僕の作品を見てくださっている方とはまた違った方たちにも楽しんでいただけるかな、という期待感もあります。
――VIVIにご来店されるお客さんに作品の楽しみ方を教えてください
僕の作品はモノクロの静物画なので、一見暗い印象を受けるかもしれないのですが、引いて見てみるとバナナが口に見えてきて笑っている人の顔が浮かぶような仕掛けがあります。
これは日常で当たり前に見ている物を違った視点で見ることによってその当たり前が別の物に見えてくるように誘導しているからなんです。
単なるりんごやバナナが顔のパーツの一部になる。
見慣れたものや景色をもう一度違う視点で見ることの面白さや新たな発見を、絵画によって促すように仕掛けています。
そんなユーモアやそれぞれの視点を持って作品を楽しんでいただけたら嬉しいです。
また、今までそんなに深くアートに触れて来なかった方でも、なんとなく「好き」とか「嫌い」とか「楽しい」とか、本当にライトな感覚で楽しんでもらえたら嬉しいですね。
――Matsuokaさん、ありがとうございました。
取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美