11月8日(金)から11月30日(土)まで、VIVI2Fアートスペースにて高木優子氏個展【AWAKENING 】が開催中です。
今回は高木優子氏ご本人にインタビューを実施し、個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。
profile
高木優子 @who_are_yuko
1976年生まれ、愛知県立芸術大学日本画専攻卒業、同大学院修了
2002年からアーティスト活動スタート、2006年の個展を皮切りにコンスタントにソロで作品を発表。国内外のアートフェア、グループ展にも多く出品し、音楽や衣食住など他ジャンルのアーティストとのセッションも精力的に行う。近年は海外でのアートシーンに触れる機会も多く、オリジナルな視点を持った作品を発表しています。
2023年に YUGEN GALLERYにて開催された個展【The Soul Cries】が高く評価され、各方面からの支持を得ました。
――今回の個展「AWAKENING」のコンセプトについて教えてください
Awakeningとは「目覚め」「覚醒」という意味です。今この時代あらゆるシーンにおいて大きな変革期を迎えていると感じる人は多いでしょう。それに伴う心情を表す言葉の一つとしてこのタイトルをつけました。
また私自身、人生の新たなターンに入ったと感じています。
私は愛知芸大日本画専攻を卒業してから22年間、継続的に作品発表を続けてきましたが、その間アートシーンにおいての変遷もめまぐるしいものがありました。更にコロナウイルスの流行を受け、世の中の価値観や生活スタイルが劇変する中で、これまでと同じようなスタイルで発表を続けていくことに違和感を感じるようになりました。自然と新たな形を求めるようになったんです。
ここ数年は自分の本質と真正面から向き合うようになりました。それにより周囲の環境、未来のビジョンが変わってきたように思います。私の中の自分がここに来てようやく目覚め始めた感じです。
「目覚め」は自身でさえ気づいていなかった心の中の縛りを外し、感覚で引き寄せられる物事にもっと触れたいという気持ちを高めていきました。近年は海外に出る機会も増え、この個展が始まる前はタイと香港に画材を持って行き現地で制作をするというスタイルを1ヵ月近く続けていました。
また、去年は手掛けた作品を持参し香港のギャラリーをひとりで巡りました。これまでの活動経験やプライドは思考範囲を狭めるものだと感じますが、無心の行動と自分の本質が一致した時、本当に清々しい気持ちになるんだなと痛感しました。
――今回の個展ではどんな作品を見ることができますか
全部で24点の作品を展示しています。ほとんどが今年制作したものですが、展示の中でインパクトのある大作3点は、去年の夏にYUGEN Galleryで開催した個展「The Soul Cries」で発表した作品になります。
螺旋階段を上がっていくと直径2mの浮遊する隕石のような絵の大作があり、それを中心に宇宙空間を感じる世界がつくられています。
「エモーションから生まれる涙(内なる世界)」と「コズミック(壮大な宇宙)」をテーマとした作品群はこの地球を挟んでミクロとマクロの対極にあります。しかしどちらも知り得ることのできないブラックホールがあり、見えない部分への魅力や畏れがあり、表裏一体の密接な繋がりがあるのです。
吹き抜けの2階にあるVIVIのアートスペースはエントランスからこの独自世界へと自然に誘導される空間のつくりになっています。
――エモーションとコズミックをテーマにされた理由とは
私が学生の頃は大学の課題で風景画や人物画を描くことが多く、伝統的な日本画材を使いながらそれをどう表現するかということに奮闘していました。植物や風景のスケッチをしたり、モデルさんを多方向からデッサンしたり。瞬時に形や印象を捉える練習になるものの、そこから先が描きたい絵と繋がらないのです。絵は感動しないと描けないと言われながら無理矢理感動を探すことに違和感を覚え、私は何を絵で表現したいのだろうと悩みました。
私は幼少期から人の感情に敏感であったり内心に目を向けることが多い子供でした。大人になりその性質は平和を生み出すことも歪みが生まれることもあるということを知り、「生きる」ということに深く影響するということがわかりました。見えない心の世界を描き表すことが私のアートだと、悩み描き続けるうちに気がつきました。
古代の神話によると、輝く星々は神の眼から流れた涙が宇宙に宿ることで生まれたと言われています。星座は神話や伝説に基づいて語られてきました。私はその物語に登場する彼らをモデルにエモーションを表現しています。
月の満ち欠けは精神的な意味を持ちます。新月は新たな始まりや希望を、満月は成果や満足を意味します。
無限の宇宙は精神世界に反映し、自己の探求や内面の成長と深く関わっているのです。
――岩絵具や箔といった日本画材のほかにも色々な画材を使用されるようになったきっかけは?
幼少期の頃から時間を忘れるほどものづくりが好きだったことから、高校卒業後、浪人を経て芸術大学に進学しました。
描写の美しさに魅了されて日本画を専攻したものの、まずは画材の扱いの難しさに直面しました。それまでの基礎的な絵画の勉強とは別物で、どうしたら岩絵具を綺麗に塗ることができるんだろう、自分の作りたい絵肌が表現できるんだろうと、技術的な部分にばかり気がとられていたこともありました。年月を経て自分なりの表現ができるようになりましたが、今は時代の流れの加速化が進み、より多くの作品を生み出すにはどうしたらよいのだろうと考えています。
作品を観てもらえる場は多くなっているのに、同じ制作スタイルのままでは現実的に追いつかないのです。私は日本画以外の新しい表現が加わってもよいと感じています。
まず異素材を使うきっかけになったのは、エモーション(涙)を表現する際にろうそくの蝋を使ったことです。
自分自身の身体を削って周りを照らし、いつかは燃え尽きてなくなるという有限の命が、人の人生とリンクするなと感じました。
また、最近ではレジン(樹脂)という素材を使うことも多くなりました。これからも可能性を感じる素材や制作方法を模索していきたいです。
――飲食店を兼ねたアートスペースという場所で展示することについて
今はいろんなスタイルでの発表の仕方が世の中にあると思います。そして時代の流れとともに昔よいとされてきたものが合わなくなるということもあります。そこには自身の選択が必要になり、自分の感覚が鈍る場は避けなければならないと感じています。質問とズレてしまいますが、ここは大事な部分だと思っています。
――VIVIには何度か足を運んでくださっていますが、どんな印象を持たれましたか?
空間、料理、アート、etc…都会の森をコンセプトに細部まで洗練された場所というイメージです。
プロデューサーとの連携で鮮度が常にアップデートされている印象があります。集う年齢層や客層も幅広く、こだわりを持たれたお客様も多いのではないでしょうか。
――最後に、ご来店されるお客さんに作品の楽しみ方を教えてください
美味しいお料理を食べることも絵を見ることも居心地のよい空間に身を置くことも幸せなホルモンが出る行為であり、VIVIはそれが同時に体感できる場所だと思います。
湧き出てくる感情を存分にお楽しみください!
――高木さん、ありがとうございました。
取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美