INTERVIEWインタビュー
INTERVIEW

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MASUMI FRAGIO氏 インタビュー

インタビュー

7月12日(土)から8月31日(日)まで、VIVI2FアートスペースにてMASUMI FRAGIO個展【intertwined】が開催中です。
今回はMASUMI FRAGIO氏ご本人にインタビューを実施し、個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。

profile

MASUMI FRAGIO(梶山 真澄) @masm_fragio

画家/サックス奏者。広島県出身。
16歳でサックスに出逢う。
Jazz live bar SOHOにて清水末寿の演奏に吹き飛ばされ、Jazz musicianを志す。
2012年頃より、音楽活動と並行して独学で絵を描きはじめる。
2013年、単身アメリカ・ニューヨークに渡る。
かつてアンディ・ウォーホルが所有し、ジャン=ミシェル・バスキアが住んでいた部屋を借り、そこをアトリエとして創作活動を開始。
マンハッタン・NOHOで初個展【”BIG BANG”IN THE EAR】を開催。
2017年、ドイツベルリンへ拠点を移す。同年 個展【Sonnensamen】を開催。
その後、絵筆とサックスを持ち様々な国へ一人旅をする。
2019年日本に帰国。
現在は板前修行をしながら、広島県を拠点に活動している。

――今回の個展のコンセプトについて教えてください

今回の個展は、私が今までの人生において深く関わってきたさまざまな要素を繋ぎ合う展示にしたいという想いから「intertwined(絡み合う)」というタイトルを名付けました。

個展のお話をいただいてから、VIVIの空間やオーナーの杉本さんとの対話を通して、自分が今まで大切にしてきた「音楽・ART・食」をすべて表現したいと感じたんです。

なので、今回はアートとサウンドを同時に作り上げていくライブパフォーマンスにも挑戦しました。

――今回見られる作品について教えてください

1点の描きおろしを除き、壁に飾ってある作品は今まで描きためてきたものからピックアップしてきました。

VIVIさんとコラボレーションしたい気持ちが強かったので、今回はお皿やグラスをメインに制作しました。8月末まで開催されるので、途中でまた新作を追加する予定です。

――MASUMIさんの作品のモチーフとは

モチーフは「これを描いています」という答えがあるものではなくて、見てくれる人それぞれが想像して違う受け取り方をしてもらえるような作品にしたいと思っています。

例えば、ハグしたときの体温だったり、そのときに感じた香りだったり、子どもの頃に見たような田んぼの稲穂に夕日があたっている景色だったり、季節が切り替わるときの香りだったり。

本当は忘れたくないけれど、もう忘れてしまった記憶は誰しもがたくさん持っていると思うので、そういう深いところに触れられるような作品を描きたいですね。

――個展初日はどのような手法で音とアートのライブパフォーマンスをされたのでしょう

音楽に関しては、ライブ録音した音をループマシンで重ねていく方法で作っていきました。

まずはカリンバのシンプルで優しい音からはじまり、水や光、風の音などを重ね、その音のイメージを描きます。描き終わったら筆を置いてまた音を重ね、その音を描くことを繰り返しました。

音を重ねていくうちにリズムが生まれ、サックスが入ることでメロディーとなり、音が厚くなっていくのと同時に、絵もどんどんと色を帯びてくるんです。


――今回のようなライブパフォーマンスは頻繁にされているのですか

前から構想はあったのですが、実は今回が初めての試みでした。

今までは絵描きとして演奏家の方とコラボレーションさせていただく機会は多々あったのですが、作画と演奏の両方を自分で行うことはなかったんです。なので、やってみる前は色々と不安もありましたし、わたしにとっては挑戦でした。

音楽はある程度構成を考えて準備をしていたのですが、絵に関してはその音のイメージを感じたままに描いていったので、絵だけに集中できていたときと比べるとやはり難しさは感じました。

もっと次はこうしたいなという課題もたくさん見つかりましたが、それ以上に自分のなかで手応えや達成感を得られましたし、空間がどんどん満たされていく過程をお客さんの視覚と聴覚で感じていただけたことがとても嬉しかったです。これからも、どんどんブラッシュアップしていきたいですね。

――MASUMIさんが音楽に出会ったきっかけは

わたしは3歳からピアノを始め、高校で吹奏楽部に入部してサックスに出会いました。
高校からサックスを始めたので完全な初心者だったのですが、そのときの顧問の先生がとてもジャズが好きな方で、本当に熱心に指導をしてくださったんです。

サックスにどんどんのめり込んでいくなかで、高校1年生の夏にジョンコルトレーンの「my favorite things」のソロパートをもらって演奏できたことがとても感動的で。それ以来さらにサックスを演奏することが好きになり、高校3年の頃にはすでに音楽で生きていきたいと決心していて、音大への進学が決まっていました。

そして、高校を卒業するくらいのときに顧問の先生が「すごいサックスプレーヤーがいるから」と、ジャズバーに連れて行ってくれたんです。
そのサックスプレーヤーこそが現在わたしが師匠として崇めている清水末寿さんで、その音に吹き飛ばされたような衝撃を受けました。

吹奏楽部ではクラッシック音楽を演奏していましたし、みんなと混ざり合うような優しい音色を目指していたのですが、ジャズの世界にもうすっかり魅了されてしまって。
通い始めた音大はすぐに辞めて、ジャズバーでアルバイトしたり、清水末寿さんのサックス教室に通ったりと、ジャズに夢中な日々を送っていましたね。


――ジャズに魅了されたMASUMIさんが絵を描き始めたのはなぜでしょう

大人になって見返すまで全然記憶になかったのですが、小学校の文集の将来の夢の欄に「画家」って書いているくらい、元々小さい頃から絵を描くのが好きでした。
でも大人になってからは音楽に夢中だったので絵から離れていたのですが、あるときCDジャケットを描く機会をいただいたんです。

それで久しぶりに絵の具で絵を描いてみたら、すごく楽しくて。音楽とはまた違う新しい表現で解放されるような感覚にワクワクしましたし、色が重なって目の前に世界が現れていく様子に胸が高鳴りました。

それからというもの絵のオファーをいただくようになり、ふすまサイズの大きな作品や壁画にも挑戦したりと、色々な経験をさせてもらいました。

――出産を経て、母になったことは作風に影響がありましたか

妊娠5ヵ月くらいのときに広島で個展を開催したのですが、そのときから作風がどんどん抽象画に切り替わっていったと思います。

妊娠中、お腹にいる赤ちゃんからとてつもないエネルギーを感じていましたし、まだはっきりかたちを持っていない姿も本当に美しいな、なんてことを毎日感じながら過ごしていました。
このような目には見えないけれど確実にそこにあるエネルギーだったり、未完成の命の美しさからたくさん影響を受けましたね。

あとは、わたしも物事の考え方が変わったり、自然とほぐされて優しくやわらかくなっていくような感覚もあったので、自分自身の変化も感じました。

今回展示してある2021年の作品はまさにそんな心境だった妊娠中の作品なので、タイトルもちょっと不思議な感じのものが多いですね。そんなところも注目してもらえると嬉しいです。

――今回のライブパフォーマンスは、もうすぐ3歳になる娘さんもご覧になったそうですね

今回の個展でライブパフォーマンスをさせていただいたことが本当に大きな喜びだったのですが、特に娘に見せられたことが本当に嬉しかったんです。

当日の娘の様子を見てわたしも驚いたのですが、娘は心から楽しんでいてくれて、ちゃんとわたしの表現を感じてくれていたんです。
ライブパフォーマンスが終わって娘を抱き上げたときに「母ちゃん、すてきだったよ」と言ってくれて、本当に感動しました。
大好きな音楽と絵を自由に表現して、それを人々と共有していくというわたしの生き様を、言葉ではなく実際に見て体感してもらうことができてとても幸せな時間でした。


――「職業はひとつでなくてはいけない」という概念を持たずに育つ娘さんの未来は明るいですね

そうですね。わたし自身「音楽と絵とどっちで生きていくの?」とよく聞かれていましたし、どちらもやりたいけれどどちらも中途半端になってしまうのかなと悩んでいた時期もありました。

でも、ニューヨークやベルリンに行って生活してみたら、写真撮って歌も歌うし、ダンスも映像も音楽も作るし、絵も描くし。とにかく自分が好きだと感じるすべてのことをまっすぐにやって、誰にどう評価されようが気にしない純粋な表現者たちと出会ったんです。


そうした人々と交流することで、どっちかに決めなくてもいいし、どちらもやるからこそ生まれる景色もあるんだろうなと思えるようになりました。

――さらに板前修行もされているそうですね

海外移住を考えているのですが、娘という守るべき存在ができたので、やはりしっかりと手に職をつけておきたいなと。そのときに思いついたのが、寿司職人だったんです。

わたしは今まで飲食業もずっとやってきたので接客も大好きですし、寿司の板前さんだったらカウンター越しに接客もできます。ある意味ライブパフォーマンスでもあるので、もう絶対わたし向いてるわと思って(笑)。それで1年前から板前修行をはじめました。
包丁の研ぎ方から覚えることからスタートでしたが、魚屋でも働き出してひたすら魚をさばくようになってからは大分慣れてきましたね。

自分自身の表現活動は一生続けていきたいので、そのピュアな思考がぶれないためにも、生活を支える別の力を養っているところです。

――最後に、VIVIに来店されるお客様へメッセージをお願いします

まずは、こんなに暑いなかご来店いただいて、作品を見てくださりありがとうございます。

今回の展示は食と音楽と絵という色んな感覚が溶け合う空間なので、ぜひ皆さんもVIVIの美味しいお料理と飲み物と一緒に、わたしの作品も楽しんでいただきたいですね。

以前は「自分の内面の世界を見てほしい」という気持ちで創作していた時期もありましたが、今は誰かと共感し合うことや、一緒に時間や感動を共有することにこそ、喜びや意味を感じています。

なので、少しイメージが膨らむようなヒントとなるタイトルを見ていただいて、子どもの頃の情景や無邪気な気持ちを思い出してもらったり、心がほぐされて癒しになれたらとても嬉しいです。

――MASUMIさん、ありがとうございました

取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美

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