11月7日(金)〜12月29日(月)まで、VIVI2Fアートスペースにて南景太氏個展【Crayon Play on】が開催中です。
今回は南景太氏ご本人にインタビューを実施し、個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。
profile
南景太@minamikeita.1116
東京都出身、岐阜県在住。セツモードセミナー、MJイラストレーションズ卒業。
アナログ手法では主にクレヨンやオイルパステルを使用。また自作の絵を素材としたデジタル作品も展開、アナログとデジタルを行き来しながらカラフルですこし不思議な世界を描く。
HBファイルコンペvol.34 鈴木成一大賞、MJ賞2024 飯野和好賞、TIS公募第12回銀賞、第15回ノート展大賞等。東京、名古屋、岐阜、大阪、福岡で個展開催。グループ展・企画展参加多数。
書籍装丁や雑誌さし絵、CDジャケット、商品パッケージ、演劇ポスター、店舗壁画などさまざまな媒体にイラストを提供する。

――今回の個展のコンセプトについて
私は昔から、自分のなかには「大人」と「子ども」が共存しているという感覚があったのですが、特に最近そのことを考えるようになりました。
「子ども」の部分は本当に純粋な欲求を発する存在で、「大人」はそんな子どもの欲求を上手に社会と折り合いをつけている存在。
「大人」の方が未熟だと、会社や他人と折り合いをつけることができないために「子ども」が発する純粋な欲求や喜び、自分が本当に好きなことを抑えつけるしかなくなってしまうんです。
だから、幸せに生きていくためには「大人」の部分を成熟させて「子ども」の部分を守っていくことが大切なのだなと思うようになりました。

そんな思いから、今回の個展を【Crayon Play on】と名付けました。
誰しもが幼少期に手にしたことがあるクレヨンを子どもの象徴に見立て、そのクレヨンで遊び続けることは自分のなかの「子ども」を大切することを意味し、「子ども」を抑圧せずにいきいきと輝かせたいという願いが込められています。

――今回展示されている作品について教えてください
ここ3年は、自身最多となる8回の個展を開催した期間でした。
今回のVIVIの個展は、東京・名古屋・大阪・福岡で個展をしてきたなかの最後の個展という位置づけなので、この3年間の総括的な個展にしたいという思いで構成を考えました。
約2ヶ月と長い開催期間なので、途中で作品の総入れ替えを行い、前後半あわせて70点以上の作品を展示します。
作品中の約7割がクレヨン画で、あとの3割がクレヨン画を素材としたデジタルコラージュ作品になっています。

――クレヨンを使うようになったきっかけは
20歳の頃にセツ・モードセミナーという新宿の美術学校に通っていた時、たまたまクレヨンを使う機会があったんです。
それまでは色、特に絵の具に対して苦手意識があって、もっぱらシャープペンや鉛筆でモノクロの線画を描いていました。でも、クレヨンを使ったときにとても開放感があり楽しく感じたことからクレヨンで絵を描くようになり、それから24年経った今も愛用し続けています。
今はサクラクレパスと、それよりも少しやわらかいオイルパステルを使って描いています。

――クレヨンの魅力はどんなところにありますか
クレヨンは手で持って描くことができるので、その直接的な感覚が好きというのが理由のひとつです。
あと、クレヨンは力の入れ具合で折れてしまったり、細い線が描けなかったり、カスがでたりと難しい面もあるのですが、逆にそれが予期せぬ偶然を生んでくれることも多くあります。私は絵を描くときにその偶然を取り入れるのがすごく好きなので、クレヨンのそんな使い勝手が悪く、コントロールがしづらいところも魅力だと思っています。

また、手入れが全く必要ないことも描き手にとってすごく優しい画材だなと思います。
私は20歳頃が一番色々悩んでいて、生きづらいなと感じていた時期だったのですが、そんなときに急に描きたくなったらすぐに描き始めることができて、飽きたらポイってやめられるクレヨンの特性がすごくありがたくて。その頃、クレヨンに優しくしてもらえたっていうこともあって、今もずっと好きで使っている面もありますね。

――作品のモチーフについて
私は、観てくれている方の想像を刺激するような、物語を感じる不思議な絵を描きたいと思って作品づくりをしています。
「頭をガーンと殴られたような衝撃を与えたい」というほどの衝動はないんですが、「こうあるべき」というあらゆる常識や思い込みを、作品世界を通して揺さぶりたいという思いがあります。
例えばさっきの「大人」と「子ども」の話で言えば、社会では「大人になったらこうあるべき」という姿を押し付けられているような感覚が私は苦手で。そういう価値観を揺らしてほぐして変えていきたいなっていう欲求があるので、カラフルな世界のなかでもどこか不穏さや怖さ、シュールさを感じるような絵を描いています。

――作品の作り方を教えてください
小さな作品は「今日は山吹色を使おう」という感じで色を軸にして、思いのままに描いていますね。
描いている途中で絵を回転してみると、人を描いているつもりだったのに風景に見えるからやっぱり風景に変えたり。でもまた回転させたらやかんっぽくなったからやかんにしちゃおう、みたいな感じで下書きもなくすごく自由に作っています。
大きな作品や複雑な構図の作品は、パソコンに取り込んである自分の作品を切ったり貼ったりしながらコラージュして作っています。
ちょっとずつ広げていって少し見えてきた世界を掘り起こすような感覚で作品を作っていけるデジタルコラージュの手法は、自分をすごく解放させてくれたと思いますね。

――下書きを描かない理由は
私は、作品が完成したあとに自分でもびっくりするような意外性を感じたいと常々思っています。
下書きというのは作品の先を見据えて描かれたもので、それに従ってきっちり綺麗に仕上げることは創作というよりも作業のように感じてしまうんです。
それも、先ほどお話しした「大人」と「子ども」にリンクしているところがあって。絵の完成図(未来)を考えて、下書きをきっちり描くのは、自分からすると「大人的」なんですね。反対に、未来でもなく過去でもなく今描きたいもの、今好きなものを思いのままに描くのが「子ども的」な表現方法で、私はそんなふうに作品を作りたいと思っています。

デジタルコラージュは作品の一部を切り取ったり、それを拡大縮小させて回転して…と、本当にやれることが無限大だから、最初は何も考えずにちょっとずつ膨らませて、偶然なんかも取り込みながら作っていく自分のスタイルにとても合っています。
私自身も驚いて揺さぶられるくらい、自分の頭だけでは描けないような絵を作りたいという欲求がありますね。
それは自分のなかの「子ども」を喜ばせるためなのか、はたまたそれを見た「大人」が喜んでいるのか。そこまではまだ分析できていませんが……。

――南さんが描くのは、自分のなかの「子ども」を満足させるためなのですね
29歳で岐阜に移住して結婚して、フルタイムで働いて、子どもができて…と、どんどん時間がなくなっていったのですが、描かないと自分のなかの子どもが大騒ぎするんです。
20代の頃に手にしていた自由な時間をもったいない使い方をしていただけに、今会社に行って疲れて帰って寝るだけっていうのがもう悔しくて。意地になって時間を捻出して描いていますね(笑)。

――VIVIでの個展の感想はいかがでしたか
今まで展示したことがある飲食店併設ギャラリーは独立したギャラリースペースがないことがほとんどでしたが、VIVIはギャラリースペースがしっかりと別に設けてあるので展示がやりやすかったです。
また、ホワイトキューブのようなギャラリーだと、自分のお客さんにしか観ていただけないことがほとんどなので、普段自分がリーチできないお客さんに観ていただける良い機会になったと感じています。

――最後に、VIVIのお客さんにメッセージをお願いします
私の作品は、色遊びをしているようなつもりで作っています。なので、色の組み合わせや不思議な世界観を楽しんでもらえたら嬉しいです。
また、私はいつも最後に自分の絵を鑑賞してみてからタイトルを付けています。ぜひ皆さんも絵のなかに入り込んで、私が付けたタイトルに囚われすぎずにご自身の解釈だったり感じた世界を楽しんでもらいたいなと思っています。

そして、私がVIVIでお会いするお客さんとお話ししていて感じたのは、自分のなかの「子ども」をちゃんと大切にされている方が多いなということです。だから、私もVIVIで在廊している時間をとても楽しむことができました。
これからもぜひ、自分のなかの「子ども」に寄り添って可愛がってあげてください。
――南さん、ありがとうございました。
取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com)牛丸朋美