9月9日(土)から10月1日(日)までの期間中、VIVI2Fアートスペースにて郷さとこ氏個展【想いと実り】が開催されます。
今回は郷さとこ氏ご本人にインタビューを実施し、今回の個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。
<profile>
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郷さとこ(ごう さとこ)
線画家。埼玉県生まれ
2012年より作家活動開始。多くの作品に幾何学模様や図形が登場し、線画を活かした創作を行う。
作品発表のほか、パッケージやグッズのデザイン画、 企業や施設のメインビジュアル画、地上絵、 壁画、ボディペインティング、ワークショップ、アートプロジェクト参加など表現方法は多彩である。
■主な仕事
・shuuemura 「pastel fantasy」メインビジュアル担当、世界30カ国以上で展開
・JR西日本 「和歌山キャンペーン」 PR ポスターメインビジュアル担当
・日本コロムビア (株) 吉松隆 「鳥の響展」 CD デザイン画担当
・椿温泉観光協会 商品開発デザイン画担当 (和歌山県白浜町)
他、 店舗& JR駅舎壁画、 保育園サイン&アートワーク、 デザイン画提供、 多数
■主な海外展示
2016 2人展 hpgrp GALLERY NEW YORK (U.S.A)
2017 企画展 「Chopsticks-3rdExhibition-」 735 発表@香港 PMQ (Hong Kong)
2019 企画展「Sanris Art & Crafts Festival 2019」 (Sanris, France)
――今回の個展のコンセプトについて教えてください
今回の個展【想いと実り】では「見えない世界」と「見えている世界」、このふたつの世界を表現しています。
元々わたしは、愛や光、空間の雰囲気などの「見えない領域」を抽象的に表現したり、一方でイラストレーションに近い作品も描いているのですが、今回はその両方を同じ空間で展示してみました。
――展示される作品について教えてください
今年グループ展で発表した4点以外は、今回の個展のために描きおろした作品です。全部で33点展示しているので、そのうちの29点が新作になります。
そのなかでも【想いと実り】を分かりやすく表現した2点が、フライヤーに使用されている作品です。普段目に見えないものを描くときはモチーフなどを設定しないのですが、これは「木蓮」をモチーフにして描きました。上は発するエネルギー「見えない世界」を、反対に下は「見える世界」を表しており、このように同じものを描き分けるのは今回初めての試みになります。
――上と下の作風はかなり違った印象を受けますが、どのように描き分けているのでしょう
上のような線画のときは、先に色をのせてから線を描いています。色をのせている段階では線を意識せずに描いていますが、いざ線を描くとなった瞬間にうわっと線が浮かび上がってきて、ピースが揃っていくんです。描く場所の順番もバラバラで、他の場所が気になったらそっちから描きだしたり。そうやって描いていくと、最後には必ずつながるんです。
逆に下のような線画は、先に線を描いてから色を塗っています。すごく時間はかかるんですが、ギリギリを塗っていく過程が好きで(笑)。
また、わたしは敢えて塗り残しが出るような薄い絵具を使っているので、塗ってから線を描くと下の色に影響を受けてしまうんです。
じゃあどうして綺麗に塗れる絵具を使わないかというと、どこか歪んでいたり塗りの筆の跡が少し見えるような作品を許しているからなんです。完璧な物よりも、どこか未完成さを感じさせる作品の方が、人の心に引っかかって何かを残せるんじゃないかな、と思っているので。塗り残しの部分だったりも、その作品の魅力としてぜひ注目していただきたいです。
――線画家として活動されるご自身のルーツについて教えてください
元々私は、建築系のデザイン事務所でCADオペレーターとして働いていました。図面を引く仕事をしていた名残からか、線は「描くもの」というよりも「引くもの」という考えなんです。だから作品を描いているときは、図形をきちっと埋めたり、パズルを合わせていくような感覚になることが多いです。
――建築デザインの仕事からアーティストに転身したきっかけは?
仕事のなかで度々触れていた海外のテキスタイルデザインに心を動かされたのが、描く側になりたいという気持ちのはじまりだったと思います。
でも、絵を描き始めたきっかけというのは、30歳くらいのときに突然「あ、絵を描こう!」って思いついたからなんです。昔から絵を描いていたわけでもないし才能があるかどうかも分からないのに、急に「絵で生きていこう」って(笑)。
それからイラストレーターの先生のお教室に通い始め、その先生のお陰で今こうして絵のお仕事ができるようになりました。
――先生からはどんな影響を受けたのですか?
わたしの先生はいつも「とにかく自由に描いてください」というスタンスで、先生の方から発信して何かを教えられるということはありませんでした。
例えば、絵具の使い方を教えてくださいって言ったときも「間違っててもいいから、思うようにやってごらん」と返ってくるので、分からないなりにやるしかなくて(笑)。
先生にとっては、画材の使い方が合っているか間違っているかは問題ではなくて「自分が一番しっくりくる方法を見つけられれば、それがその人の作風になる」とおっしゃっていました。
そうして完成した作品を見せると、どんな作品でも必ずいい部分を見つけてくれて、それぞれの生徒の個性を褒めて伸ばしてくれるんです。
そんな先生が大好きで、絵のお仕事をするようになってからも結局9年間通っていました(笑)。
だから、先生から受けた影響は「思うがままに描いていい」というマインドですね。
――名古屋やVIVIの印象について
元々南志保さんや牧かほりさんと展示でご一緒したことがあったので、VIVIの存在は知っていました。素敵な空間だなと思っていたので、VIVIコンセプターのタカさんから展示のお誘いがあったときは喜んでお引き受けしました。
志保さんやかほりさんの作品と一緒の空間に展示できることを楽しみにしていました。
――ご来店されるお客さんにメッセージをお願いします
アートの良いところは、作品を見ることで心が動き、それを機に色んな物事が動いていくことだと思っています。
わたしの作品もそんな役割を果たせたらなと思うので、どうか心のままに自由な気持ちで楽しんでいただけると嬉しいです。
――郷さん、ありがとうございました。
取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com/)ウシマルトモミ