INTERVIEWインタビュー

INTERVIEW

1

墨絵・陶墨画アーティスト 西元祐貴氏インタビュー

インタビュー

1月4日(木)から1月28日(日)まで、VIVI2Fアートスペースにて西元祐貴氏個展【Year of the Dragon】が開催中です。
今回は西元祐貴氏ご本人にインタビューを実施し、今回の個展の見どころやご自身の作品についてお伺いしました。

profile

西元祐貴 @yu_ki.nishimoto
https://www.yuki-nishimoto.com/

1988年生まれ。鹿児島県出身。ジェニエット所属。

世界的な注目を集める墨絵・陶墨画アーティスト。伝統的な技法に捕われず、「躍動感」「力強さ」を追求した作品を展開。龍や侍などの古典的なモチーフから、スポーツ選手やミュージシャンなどをモチーフに描く。

何十枚ものスケッチを基に練り上げられた構図を、巨大な和紙に短時間で描き切る。まさに瞬間の美学。ライブパフォーマンスが生み出すダイナミックなアートは、観る者を魅了し、圧倒する。ヨーロッパ、アメリカ、中国など海外での個展やライブパフォーマンス、CG映像を始めとした様々な分野とのコラボレーションなど、世界を舞台に活動している。

2015年には、陶土の板に釉薬で描き、高温で焼き上げることによって、千年褪せない生命を得る新しい現代アート「陶墨画」を公開。墨絵の技法と陶板画のコラボレーション作品は、ファンやコレクターから高い支持を得た。

――今回の個展のコンセプトについて教えてください

今年は辰年ということで新作の陶墨画をメインに、龍をモチーフとした作品を集めて展示を行うことにしました。今まで培ってきた技術や、自分の感性を龍に形を変えて表現しています。

――新作の龍は「平和」への祈りが込められているとのことですが、そこに至った背景は

やはり昨今の世界情勢を受けて、命が失われていくような争いが無くなるよう祈願しながら描き上げました。ただ、龍というのはそう思い通りにいくような存在ではないと思っています。神として願いを叶えようとする龍もいれば、願いは叶わないけれどそれでも生きていかなければいけないというメッセージを込めた龍もあります。祈りの龍の展示会ではありますが、そういった裏テーマも意識しながら制作しました。

――龍というのは墨絵や陶墨画ととても相性の良いモチーフだと思うのですが、西元さんが龍を描きはじめたきっかけを教えてください

墨を扱うようになったのは、今までの水墨画や日本画になかったタッチや表現を追求したいと思ったことがはじまりです。僕はよくアスリートも描くのですが、アスリートの肉体や筋肉を墨の一発で表現する、というのを自分の作風としていました。

そんななか、最初に画家として依頼を受けたのが、お蕎麦屋さんの天井に龍を描くという仕事だったんです。それまで龍は一切描いたことがなかったし、自分の中ではドラゴンボールに出てくる龍のイメージくらいしかなかったので……(笑)。当時は自分なりに随分模索しながら制作しました。

そして、その作品を見た方からお仕事をいただいたり、色々な人に会ったり色んな場所にでかけたりと、自分の世界がどんどん広がっていきました。だから僕にとって龍は、一番長く一緒にいて共に成長しているモチーフだと思うので、やはり特別な想いがあります。あとは単純に僕も辰年生まれというのも理由のひとつですね。

――実体のない龍を描くことの面白さはどんなところにありますか

龍は実体がなくすべてイマジネーションで描くからこそ、自分の心理などが100パーセント表れると思います。意識はしていないのですが、自分の精神状態や周りの環境によって、作品の龍の表情や形が変わるんです。例えば20代の頃に描いた龍はめちゃくちゃ荒いタッチで、殺気立っているような龍が多かったのですが、30歳を過ぎてからは少し柔らかい表情になったというか、大胆なところもあるけれど繊細な部分もあったり。それは多分技術云々ではなくて、歳を重ねた自分の変化が龍にも反映されているのだと思います。

――吹き抜けの空間には、鹿児島国体の際にライブペインティングで描き上げられた龍が飾られています。ライブペインティングの醍醐味を教えてください

ライブペインティングのときは、1週間くらい前からスケッチブックに殴り書きしたりして99パーセントまで練ってからその場に立つのですが、実際に描いていくと予想通りにはならないんです。最後はライブの空気感だったり、会場や自分のテンションだったり、そうした熱量を持った作品が仕上がることがライブペインティングの面白い部分だと思います。

――陶墨画という新たなジャンルへの挑戦したきっかけは

8年前に、現在お世話になっているアトリエの窯元の方から「焼き物に挑戦してみませんか」とお誘いを受けたのがはじまりでした。でも、実際にやってみると全然うまくいかなくて……。焼き物は最後に火を入れるので、自分がどんなに頑張って描いてもあとは自然に任せるしかないんです。自分の出したい色が出せない、割れてしまうなどの壁にぶち当たったことで、どんどん焼き物にのめり込んでいきました。

以来、何回も失敗を繰り返しながら釉薬や焼き加減を調整して、それこそ最初に龍を描いたときのように試行錯誤を続けてきました。そしてやっとで思うような作品が作れるようになった今、2024年辰年というタイミングで自分が大切にしているモチーフの陶墨画を発表できるのはとても意義深いことだと感じています。

――VIVIでの展示について感想をお聞かせください

VIVIは非常に洗練されていて明るい空間ですし、感度の高いお客さまが多いと思うので、自分の作品がそこに合うかな……とちょっと心配だったんです(笑)。でも来場されたお客さまからは「すごく良かった」とお言葉をいただくことができて安心しました。

――ご来店されるお客様にメッセージをお願いします

特に若い方たちは、墨絵や焼き物に触れる機会はなかなかないと思うので、僕の作品をきっかけに知っていただいて興味を持って貰えたらいいなと思っています。ひとつひとつ質感も違い、見る角度によって色合いも変わるという焼き物ならではの魅力にもぜひ注目してください。

そして今は、能登半島地震の影響で心が沈んでいる方が多いかと思います。自分の作品が、少しでも明日への活力になったり、希望を感じてもらえるきっかけになれたら嬉しいです。

――西元さん、ありがとうございました。

取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com牛丸朋美

RELATED

関連記事

PAGE TOP