INTERVIEWインタビュー

INTERVIEW

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アーティスト 足立喜一朗氏 インタビュー

インタビュー

7月8日より2Fアートスペースにて、国内外で活躍されるアーティスト足立喜一朗氏の個展【百光年彼方から】を開催します。

今回は足立喜一朗氏ご本人にインタビューを実施し、今回の個展の見どころなどをお聞きしました。

profile

【足立喜一朗】

1979年大阪生まれ。現在はニューヨーク、ブルックリンを拠点に活動している。

精力的な活動を行い、国内では東京都現代美術館や彫刻の森美術館、BankART、仏大使館など、海外ではサンパウロ近代美術館(ブラジル)、シンガポール美術館、台北市立美術館(台湾)、釜山ビエンナーレ(韓国)などの展覧会に参加している。
また、渡米後もニューヨークやデトロイトで数々の個展やグループ展を行う。

昨年は6年ぶりとなる日本での個展を原宿にあるギャラリー「HarukaIto by island」で行い、会期中に描きあげた壁画と彫刻を組み合わせた作品が大きな注目を浴びた。またSEIKOのWIREDの広告の出演や開発アドバイザーとしてデザインに携わったり、高島屋の老舗呉服屋の浴衣デザインなど活動は多岐に渡る。また足立の作品は東京都現代美術館にも収蔵されている。

近年ではフェイスブックジャパンの本社の移転に伴い3フロアを跨がる巨大な作品が設置された。

足立の作品はミラーボールをモチーフにしている事が多い。足立はミラーボールを通して何を表現したいのか。インタビューでそれに迫っていきたい。

ーー今回のイベントで展示される作品について

VIVIの空間を意識した新作や、未発表の作品などで構成されます。

僕の作品は彫刻なので場に大きく影響されます。真っ白な空間も好きなんですが、色々と制限があったりした方が反対に面白いことが生まれることも多いんですよね。

未発表の作品も、VIVIのスペースを見てここならではの見せ方ができそうだと思ったので 今回展示させてもらうことになりました。 

ーーVIVIで個展を開くに至った経緯と、VIVIの印象について

長い友人にタカ・プリンシパルという怪しい人がいて。 いつも何か面白そうなことがあると誘ってくれるんですよ。今回の展示は彼の紹介で実現しました。

去年原宿で開催した僕の個展に、タカさんとVIVIオーナーの杉本さんと一緒に来てくださって。 実はVIVIで作品を展示されたCHA2さんと平沼さんも連れてきてくれました。いつも色んな人を引き合わせてくれる面白い人です。

僕も個展期間中にVIVIにお邪魔したのですが「都会の森」という店のコンセプトなどにも共感できる部分があったので、何か面白いことが一緒にできそうだなと感じました。

ーー今夏は一時帰国されるそうですが、NYに拠点を移した理由を教えてください

ご存じのようにニューヨークには巨大なアートシーンがあります。そのアートシーンは様々な人種や複雑な社会問題を孕んでおり、そこに自分の作品はどのような意味を持ち得てくるのか。それは実際にそこに住んで制作してみないと分からないなというところがあって拠点を移しました。 

僕は昔から自然と人間との関わりというものにとても興味があります。

例えば日本人の自然の捉え方、日本人にとって自然というのは恩恵を受けている一方で、人智を越えた様々な自然災害に対して畏怖の念を抱くといった側面があるとされています。

神道における八百万の神信仰などもまさにそうですが、僕はその日本人の自然観が少し美化され過ぎてしまっているようにも感じたり‥‥。 本来日本人とは手つかずの自然をそのまま受け入れるのではなく、制御下に置かれた自然や人工的に作りだした自然を理想としているのではないかと仮定しました。僕の作品には、そういった思想が反映されています。

ーー足立さんの代表作であるミラーボールと自然とのつながりとは

ミラーボールが光を浴びて作り出すその反射光は都会においては星空を想起させたりします。しかしそもそもミラーボールというのは無機質な鏡が規則的に敷き詰められた完全な人工物体であり、実際の星空とは正反対のものだったりします。そのコントラストを楽しんでいるところもありますね。

今までは星空から始まり、木漏れ日、日食、はたまた太陽系といった大規模な自然現象までミラーボールをモチーフに表現してきました。

今回展示する作品には月面の地形を3Dで起こしてそれをミラーボール化した作品もあります。これは「光を受けて初めて輝ける」という月がミラーボールにどこか似ているなというところが出発点です。実際に月がミラーボールになったら毎晩パーティーで楽しそうですよね。

ーーミラーボールを作り始めたきっかけは

元々僕は人間の身体を取り巻く一番近い空間に興味があったので、大学ではインテリアを専攻していました。

クラブカルチャーからインスパイアされた作品を作るようになったのですが、ミラーボールというモチーフに惹きつけられるようになりました。先程お話しました疑似的な自然としてのミラーボールという以外にも、それが置かれる場所によって持つ意味が変わってくるという点も興味深くて。 

例えば、NYでは70年代からLGBTの運動が活発になり、マイノリティの人たちが集まるようなクラブが隠れた場所に作られたりしていたんですね。なのでNYの歴史で見れば、ミラーボールはマイノリティの象徴という意味合いを持っていたりもします。そしてこれはあくまでも自分の解釈なのですが、ミラーボールには教会の十字架のような役割があったのではないかと考えています。

その一方で、日本でのミラーボールの印象と言えばバブルだったりディスコブームだったり、欲望が渦を巻く世俗的なものの象徴だったりしますよね。 

ーーでは日本と海外では足立さんの作品に対するリアクションも異なりますか

はい、そのリアクションに対して次に作品を制作する上でのアクションも違ってきましたね。

日本でミラーボールの作品を発表したときは、例えば十字架のような宗教的なものや自然をモチーフにして、いかにミラーボールが持つ世俗的な意味から遠ざけられるかというところを重視していました。

ですがNYではそういったことはあまり意味がない、あるいはクリアされていると感じたので、その先にあるものを表現しなければいけないなと思索しています。

ーー最後に、来店される方にメッセージをお願いします

「アートを見る」というと堅いイメージがあったり、なんだかちょっと構えてしまったりする方も多いと思います。でも、僕の作品は見る方がリラックスしているときに楽しんでいただけるものだと思うので、ぜひ食事やお酒を楽しみながらご覧いただきたいなと思っています。

ーー足立さん、ありがとうございました

取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(https://mamhive.com/)ウシマルトモミ

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