INTERVIEWインタビュー

INTERVIEW

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コラージュアーティスト 長尾ヨウ氏インタビュー

インタビュー

レストランVIVIが誇る、天井高9mのギャラリー空間。

世界で活躍するアーティストによる個展やイベントなど、名古屋初の「料理×アート」が満喫できるのが魅力です。

2021年7月7日からは、第ニ弾アーティストとして長尾ヨウさんによるアートギャラリーがスタート。ご本人に、VIVIの印象やアートの楽しみ方などをインタビューしました。

YOH NAGAO
横浜市生まれ愛知県出身、”僕らは未来の先住民”をテーマにコラージュとアクリル絵具を使い、現代人から先住民族までの嗜好性と色彩感覚を追いかける現代アーティスト。
2009年の香港での個展開催を皮切りに、スイス、ロンドン、フランス、ベルリン、ニューヨーク、スペイン、東京、マイアミ、ロサンゼルス、メキシコなど世界各地で作品を展示し、国際的なコンペティションでは2011 年にARTAQ Urban Art Award(フランス)のコラージュ部門にて佳作を受賞。 PICK ME UP Contemporary Graphic Art Fairにも招待され、2008年にはパリの有名セレクトショップ、Coletteでも作品を展示。
近年では、Bacardi USAとHipHopプロデューサーSwizzbeatz主催のアートイベントNo Commissionへ招待、欧州アシックスから発売された限定スニーカーのためのキャンペーンビジュアルの制作、2015年のJRA中京競馬場の年間ポスターのイラストなどを手がけつつも、世界各地を回り若手育成のためのワークショップの開催や壁画制作を行うなど、世界的に活躍中の日本を代表するアーティストの一人。これまでにもJUXTAPOZ(アメリカ)、DAZED AND CONFUSED(イギリス)、LODOWN(ドイツ)、dpi(台湾)といった世界的に知名度のある雑誌にも取り上げられるなどその注目度は増しています。
作品制作以外にも実際のメキシコのマヤ人、ナミビアのヒンバ族やヘレロ族などの先住民に会いに行くフィールドワークも実施している。
2017年には5年間拠点にしていたドイツ・ベルリンから一旦日本へ引き上げ、現在はニューヨーク進出を視野に入れ名古屋市郊外のアトリエで制作活動中。
(公式サイトより引用)

――今回、VIVIではどんな作品を?

1メートル60センチくらいの大きな作品を新たに2点制作しました。前回のHIRANUMAさんのギャラリーとは少し印象を変えたいという気持ちと、あの空間に大きな作品を飾ったらインパクトがあるだろうと思ったからです。他にも大きな作品を数点揃えたので、きっと楽しんでいただけると思います。

――コラージュ作品のルーツについて。

子どもの頃は、ミニ四駆やレゴブロックは好きで図画工作が得意でしたが、絵に関しては僕よりもっと上手な同級生が誰かしらいましたね(笑)。

名古屋造形大学へ進学して、グラフィックデザインを学ぶなかでMacに出会いました。その頃はちょうどデジタル化が加速していたので、Macでつくるように雑誌などの写真の切り抜きと色や線を組み合わせるようなことをアナログでやってみたら、それがコラージュだったんです。

アナログではありますが、身の回りにあるものを組み合わせて別のものができる、ということにとても面白みを感じました。

――海外へ進出したきっかけは?

大学卒業後はデザイン会社でデザイナーとして働きました。でも、お客様の要望通りのものをつくるだけの毎日……自分の作品だけで食べていけるような状況ではありませんでしたね。

そのモヤモヤした気持ちがあったからこそ、プライベート作品では自由な表現ができていました。2005年に「ユニクロ・クリエイティブアワード(UTGP)」にエントリーした作品が入選したんです。授賞式の華やかな舞台に呼ばれて、これでアーティストとしての道が開けるかと思ったんですが……やっぱり国内ですぐに活躍するのは難しかったですね。

でも、海外からは高い評価や指名での依頼をいただけるようになりました。

各地でアートイベントやグループ展に呼ばれるようになって、2012年に思い切ってドイツのベルリンへと渡ることにしたんです。

――海外での生活や文化はいかがでしたか?

もともと僕の祖父がアイヌの出身ということもあり、世界の民族や伝統、歴史などに深い興味がありました。実際に海外で生活してみると、国ごとの文化やルーツがあってとても刺激的でした。実際に作品にも大きく影響を与えてくれましたね。

アーティストとして本格的に活動するようになってからも、拠点にしていたドイツ・ヨーロッパ以外にもメキシコ、ナミビア、モンゴル、インドなど世界各地を巡りました。先住民族たちの暮らしや思想には本当に学ぶところが多くあります。日本で便利に暮らしていると分からないことをたくさん教えてもらいました。

――世界を巡って出会った気づきとは。

物や情報で溢れている日本のような先進国では、逆に本当に欲しいものを自分の手で獲得することがだんだん難しくなっている気がします。

日本の文化は非常に特殊で珍しい方だと思います。しかし西洋文化ばかりが奨励され、固有のものが同時に失れつつあることには非常に警戒をしています。とある歴史のストーリーも片方から見れば輝かしく、もう一方から見れば悲劇だったりする。人類の進化とか国際化っていうのは、ひとつの基準に統合されることではなく、もっとお互いの違いや、多様性を認め合うことだと思います。

――掲げているテーマ「僕らは未来の先住民」について。

僕たちは今を生きているけれど、いつかそれは過去になる。未来人から見た僕たちは一体どうなんだろう?と考えます。

今を生きながらずっと先の未来をつくる。僕が経験したことや感じたことを、作品を通じて多くの方に伝えることができたらいいなと思っています。

――VIVIでギャラリー開催することになった経緯は?

2020年の年末に、タカ プリンシパルさんからのつながりでお話をいただきました。僕がいま拠点としている名古屋でアーティストが表現できるレストランができると。

とてもいい試みだと思いました。

ーーVIVIオーナー杉本氏の印象は?

ノリが良くて素直な人だと思いました。子どものような無邪気さがどこかにありますね(笑)

時短営業やアルコール類の規制がまだかかっている状況で、最初は「どうなるのかな?」という不安もありました。でも、難しい状況でもチャレンジと勇気、反骨精神で投げかけていく姿勢、良いと思ったものを直感的に取り入れていくところに、杉本さんの心意気を感じています。

VIVIは上質なアートと料理に出会える空間として、名古屋で唯一のポジションを確立させてほしいなと思っています。

――初めてVIVIの空間を見てどう思われましたか?

天井が広く抜けていて面白いですよね。僕は、すでにあるものを利用することが大切だと思っているので、大きな梁がそのまま残してあるのが魅力的だと感じました。

海外の方が来てもきっと気に入ってくれると思います。

――絵の楽しみ方を教えてください。

作品はパッと見ただけの印象だけではなく、作品のコンセプト、作者の思いや哲学なども含めて楽しんでほしいと思います。特に今回は作品をすごく間近で見ることができるので、スマホやパソコンの画面では伝わらない、いろんな発見があると思います。

だから僕はしっかりとお話ししたいです。売りたいんじゃなくて知ってもらいたいと思っているから。そのうえで、作品や僕に興味を持っていただいたり、買っていただけたら最高ですね。

ギャラリー開催期間中は、僕も何度かVIVIに足を運びます。実際にアーティストと話ができる場所はそんなに多くないと思うので、ぜひ気軽にお話しをしに来てほしいです。

――ヨウさん、ありがとうございました。

取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(mamhive)https://mamhive.com/

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