INTERVIEWインタビュー

INTERVIEW

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壁画/吹き抜け壁画コラージュ 牧 かほりさんインタビュー

インタビュー

空間、料理、アート、音響、照明…それぞれのスペシャリストが出会い、結成された「チームVIVI」。全員の個性が見事に融合し、唯一無二の空間が完成しました。

今回はVIVIを深掘りするべく、「壁画/吹き抜け壁画コラージュ」を担当した、グラフィックアーティストの牧かほりさんにインタビュー。

普段の活動や作品、チームVIVIが誕生した経緯や空間に込められた想いについて伺いました。

――かほりさんの作品について教えてください。

「牧かほりと言えば、花を描くアーティストだ」というイメージがあるかもしれませんが、もともとはモノクロで描く作品が多かったんです。

花をたくさん描くようになったきっかけは東日本大震災。自分ができることはなにかと考えたときに、明るい世界を描きたいと思いました。

最近、ロサンゼルスやサンパウロなどをまわるグループ展に参加したんですが、震災のときにつくったものを2021年バージョンにして出したんです。苦しい現状にある世界の人たちへ、明るくて太陽みたいな絵を。コロナ禍の今も、震災のときと同じようなイメージが私のなかにあるのかもしれません。

――どんな想いで描いていますか?

実はパンク精神というかストリートっぽいところがあって、エレガントも好きだけど、ふんわり優しいものよりも強いものが好きですね。

自分の作品を見ると、謎かけみたいだなっていつも思います。何に見えるのかよくわからない、花ではあるけどなんの花かわからない。見る人によって印象が違うのが楽しいですね。

――これまでの作品について。

広告のお仕事がメインなので、みんなの気持ちを乗せたコンセプトで描くことが多いです。

作品ができたから展覧会をするのではなくて、まずは空間からインスピレーションを得て取り掛かる。だから、空間と恋に落ちるのが大切なんです。

でも最近は、ユニークな空間が少なくなってきていますね。もちろん屋根がなくても自由に表現できるし、外のようなワイルドな場所でもでいいのかも…そうなるとやっぱりコロナが邪魔してきちゃいますね。

――VIVIの壁画を担当した経緯は?

20年来の友人でありVIVIの総合ディレクター、タカプリンシパルと、VIVIの空間演出を担当している南志保から声をかけていただきました。

「名古屋でレストランとアートが一緒になった空間をつくるから、壁画を描いてほしい」と。これまでファッションイベントとか友達の店で描いたことはあったけど、飲食店コラボは初めてでした。

最初聞いたときは、まだお店ができていなかったのでイメージが湧かず…コロナ禍で現地に行くこともできなかったので不安はありましたね。

――名古屋というエリアについて。

名古屋にはご縁があって、何度かお仕事をさせていただいています。名古屋マリオットアソシアホテルのレストランのドローイングや、名古屋JRゲートタワーホテルのレセプションやエレベーターホールなどにも半立体の作品を納めています。

――オーナーの杉本さんはどういった印象ですか?

初めて顔を合わせたのはオンライン会議です。その後、杉本さんが東京に視察に来たときに志保さんのアトリエで会いました。

スタイルが良くて、ハツラツとしていて、光ってました。笑 自然にレディファーストができる方で、女性にはもちろん、周りの方全てにリスペクトを持って接しているの伝わってきます。それでいて関西気質の楽しさが根っこにあって、常に笑いは絶えません。

――壁画でコラボしたWOK22さんについて。

WOKくんはストリート、私は広告系。これまで全く面識もなかったし、彼のことも知らなかったんです。けれど作品を拝見してセンスの良さ、パッション、フットワークの軽さ、全てに圧巻でした。その超パワフルな作品と時に対局なおおらかさ、優しさ、そして話しだすと止まらないチャーミングな部分に、癒される時間も多くありました。

世界のどこに行っても、タカの周りにいる人やブレーンはいい人ばかりですね。

――壁画制作時のエピソードなどを教えてください。

本番前日に初めて現場を訪れました。足場が簡単に組んであるだけだったので、高所恐怖症の私は「こんなところで描くのは無理〜」と(笑)。そしたら現場監督がとことんまで足場を直してくれて…寒くて過酷な時期の制作でしたが、携わったメンバーが信じられないくらい優しくて素敵でした。

名古屋弁もさらに好きになって、東京に帰ってからもあの独特な語尾やリズムが耳に残っていたくらいです。

――壁画のイメージやコンセプトは?

「都会の森」をメインテーマに、当日打ち合わせて決めていきました。総合空間ディレクションを務めた南 志保さんは、天井から「だいだらぼっち」が滲み出てくるイメージ。

WOKくんはお店に入ってすぐの雲の面を担当して、反対の面が私。それぞれが真ん中で交わるように、ちょっと不思議なフォルムを使いながら森の風景を描いています。

ここはもともとギャラリースペースになると聞いていたので、なるべく自然な壁の色を意識して茶色のグラデ、ピンク、水色などのペンキを使いました。森がテーマだからといって、緑色を使うイメージはありませんでしたね。

――レストランスペースのコラージュ作品について。

制作がスタートした2020年の9月は、占星術では「土の時代から風の時代へと変わる転換期」と言われていました。物質主義から精神世界へ…私もなぜか空を見上げるたびに龍のイメージが浮かんでいたんです。だからあの絵は、龍のイメージに葉っぱ、花など有機的なものを描いています。

ですが…当時は画材屋さんも印刷屋さんも自粛で休業していて、大きな作品がプリントできなかったんです。仕方ないのでA3サイズに分割して、アトリエのコピー機で印刷してつなげることに。コピー機から出力されてランダムに見たとき「あれ、こっちの方が面白い」「このまま組み替えて新しい絵にしよう!」となったんです。

コロナで今までの当たり前が遮断されたことで、新しい世界が構築できた瞬間でしたね。不思議なことに、並べているうちに龍の姿が見えてきた、と言ってくれる人もいるんですよ。

――VIVIの空間を見た時の感想は?

壁画を描いてすぐに東京に戻ってしまったので、完成空間が見れたのはグランドオープン後。家族でVIVIを訪れた2021年の4月くらいですね。感動してすぐにタカに連絡しました。

描いている時はまだ工事中の風景でわからなかったけど、空間がすばらしかった。店内に風が流れていて天井が高くて、アートもいい具合にミックスしていて…調和のとれたいい空間だなと思いました。

志保さんとは、「表参道にあったLAS CHICAS(ラスチカス)にちょっと似ているね」と話しています。

――お気に入りの空間はありますか?

手前味噌ですが、コラージュの空間が一番好きです。あとは、もともと庭のような雰囲気が好きなのでテラスもいいですね。

お店に来てくださった皆さんには全部の場所を散歩してほしいです。空や木が見える奥のテラス空間、WOKくんの彫刻、そして壁画を見ながら2階へ登って、小窓から下を見て…きっといろんな発見があると思います。

――VIVIへのメッセージをお願いします。

コロナ禍に勇気のあるスペースだと思います。オーナーの杉本さんはアート関係の嗅覚がよくて、展覧会のアーティストや流れもご縁を引き寄せている気がします。今後もいいアーティストとコラボレーションできるテンションを持続させてほしいですね。

そしてコロナが明けたら、私もディナーを楽しみにお伺いしたいと思っています。

牧かほりさんウェブサイト https://www.k-maki.com/

――かほりさん、ありがとうございました。

取材・テキスト/ライターチームマムハイブ(mamhive)https://mamhive.com/

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